真夜中のダンディー - 桑田佳祐
暗い女の部屋でマヌケな肌をさらし 覚え始めの味でうなじを真っ赤に染めて 世慣れたウソもつけない頃は 色気の中で我を忘れてた
こう言うのも変ですが、桑田さんの書くエロい歌詞はいやらしい感じがないなと思います。
まだ二十歳にわかる歌詞ではないのでそんな風に感じてるだけなんだと思いますが。中途半端な義理で 親父のために学び 他人の顔色だけを窺い拍手をあびて 泣かない事を誓った日々は 無邪気に笑う事も忘れてた
桑田さんが若かったころはまだまだ家長の権限が強い時代だったと思います。
家庭によりけりでしょうが、親父に逆らったらぶん殴られる、みたいな。
自分を殺して我武者羅に生きて、賞賛を浴び、駆け抜けた日々。
成功した桑田さんが我が身を振り返り、こんな風な詞を書くのは僕には意外でした。
イケイケガンガンの凄いオジサンとばかり思っていました。
俺は生きている
「俺は生きている」っていうフレーズがすごく刺さる。
真夜中にこの曲を聴いて不思議な気持ちになりました。
深夜の孤独感って急に死ぬことを脳裏によぎらせることがあります。
そんな弱気なメンタルをたたき起こされた気分でした。
心臓が動いて、この身体は確かに生きているんだと。
きっと桑田さんも忙殺される毎日でふと我に返って、生きてる心地がしなくなった夜があったんじゃないでしょうか。
そんなときに「バカヤロー、おれは生きてる!」と自分を奮い立たせたのです。
おそらく…。
このホホを濡らすのは 嗚呼 雨だった
頬を濡らしたのは涙ではなく、雨だった。
ホントは涙だけど、強がるように、奮い立たせるようにこう歌っているようにも聞こえます。
友は政治と酒におぼれて 声を枯らし俺はしがらみ抱いてあこぎな搾取の中に
生まれたことを口惜んだ時にゃ 背広の中に金銭があふれてた愛と平和を歌う世代がくれたものは身を守るのと 知らぬそぶりと悪魔の魂隣の空は灰色なのに 幸せならば顔をそむけてる
少し難しいですが、皮肉を歌ってるのはわかります。
学生運動が盛んだった時期、多くの若者が国の行く末や自分の行く末を憂いて、行動した。
そんな時代を若いときに過ごした桑田さんからすると、愛と平和を歌う世代(平成の若者)はどこか間が抜けていて、人間味がないように思ったのではないでしょうか。
「隣の芝は青い」ではなく、「空が灰色」ってのは面白い表現ですよね。
逆の逆のを取る表現?
夢も希望も現在は格子の窓の外に長い旅路の果てに魅惑の明日は来ない
歌詞の構成はどうやら時系列順になっているみたいで、最後の方はこれからの未来を歌っているようです。
この曲は結構ネガティブな歌詞が多いんですが、この詩の主人公自体は楽観も悲観もなく、淡々としているように見えます。
自分の身の上や周りの人たちの気持ちは歌っているのですが、肝心の自分の気持ちはあまり前に出てこない。
ちなみにこの曲は小山田さんのツイキャスで知りました。
この曲は弾き語りも結構似合います。
桑田さんの弾き語りver.もぜひ聴いてみたいところです。