夜が明けたら - きのこ帝国
the radio dept に続き、きのこ帝国。
この曲が収録されているデビューアルバムでは「憎しみ」の感情が見え隠れします。
このアルバムのリリースに際したインタビューではボーカルの佐藤千亜紀さんはある時期に嫌いな人に向けて歌詞を書いていたそうです。
この歌でも、歌詞で「復讐」という言葉が登場します。
それだけ聴くと呪いみたいで怖いですけど、聴いてみれば青春小説を読んでいる気になります。
僕は特に感情移入して聴いてしまいました。
目がさめたら すっかり夜で
誰かに会いたくなったよ
夜に眠れなくなると、「学校に行って、家に帰って、力尽きるようにして寝て、起きたらもう夜」なんてことはよくあります。
本を読んだら眠くなるときはまだ良い方。
もうどうにも眠れなくなってしまったときは本当につらい。
脳が疲れているのはがはっきりとわかるのに眠れない。
眠りたくてしょうがないのに。
このときの孤独感は堪らない。
誰でもいいから一緒にいてほしいと思うんです。
鍵もかけずに 部屋を出て
夜の 夜の空を歩く
コンビニに人気を求めて歩いていくとき、まるで自分が夢遊病者のようになった気がします。
「空を歩く」という表現は地に足のつかない、フワフワした存在の自分を表わしているよう。
夜が明けたら 夜が明けたら
許されるような そんな気がして
生きていたいと涙が出たのです
なにかをきっかけにして前を向けたらそれだけで状況は大きく変わると思います。
僕にとってはそのきっかけがこの曲でした。
許されるような気分になって救われて、そしたらば堰を切ったように涙があふれてきました。
本当に小説のなかの登場人物に自分の境遇を重ねてしまう感覚でした。
宮沢賢治の『春と修羅』やレイモンド・チャンドラーの『ロンググッドバイ』と同名の曲、それに遠藤周作の『海と毒薬』に似た題名の「海と花束」など、曲名に注目すると佐藤さん自身もきっと本が好きな方なんだとわかります。
あと、おそらく関係はないけど。
あいつが泣いていた夜
あの子は笑っていたよ
この歌詞は宇多田ヒカルの「誰かの願いが叶うころ」と似たものを感じます。
あの子は泣いているよ
この2つの曲で歌うテーマは全然違うと思いますが、どちらも変わらない事実を歌っています。
このデモ音源ver.もいいです。
ちなみに『タイムラプス』 の初回限定盤についてきます。