『星を継ぐもの』 - ジェイムズ・P・ホーガン
SFミステリー小説の金字塔的な位置づけがなされているこの作品。
実際に傑作です。むっちゃ面白い。
この本には本当に痺れました。
あらすじやネタバレはググれば沢山出てきますので、飽くまでも紹介という意味で。
月や地球などの太陽系の惑星や衛星が、どのようにして生まれたのかという問いに対しては、現在でも完全な答えはありません。様々な説がありますが、この小説ではロマンあふれるSF的解釈がなされています。
もちろん宇宙人は登場するのですが、それにまつわる謎を紐解いていくうちに人類の起源にすら近づいていきます。
間違いなくSFではあるのですが、現在の世界との乖離が大きすぎないというのがこの物語の面白さを語る上で、重要なポイントです。
スターウォーズの世界はまず有り得ないお話ですが、この物語の舞台は2028年。
惑星間飛行が可能となった時代であり、現実味があります。
読み進めていく内に情報と謎が錯綜して、頭がパンクしそうになりますが、それこそミステリーの醍醐味です。
最期には、散らばりに散らばった色んな謎を一挙にスコーンと解決してしまう完璧な仮説が最後に説明されるわけです。
それはまさに、頭から霧が晴れるような感覚で、思わず「マジかよ...」と言葉が漏れました。
よくこんなに整合性のとれたお話を思いつくなぁと感心してしまいました。
個人的には、ミッシングリンク(生物の進化過程で、その中間を担うような存在が見当たらないこと)という、実際に議論されている生物学的テーマについても、しっかりと言及していたことに興奮しました。
ホモ・サピエンスの誕生という生物学的大問題に対してもSFの観点から一つの大胆な答えを提示してきます。
都市伝説が好きな方は絶対楽しく読める本だと思います。
「有り得てしまう」というロマン。
そのロマンがページをめくる手を止めてくれません。
この小説はきっと、ロマンを感じさせる可能性とSFの度合いが黄金比で構築されていて、それ故に読者を魅了するのだろうと思います。