坂道 - 折坂悠太
大傑作、『平成』の冒頭を飾る超名曲。
僕にとっては折坂悠太の曲の中でぶっちぎりに大好きな曲です。
この曲を聴くことで得られる高揚感たるや。
イントロのピアノの九つの完璧な音階の組み合わせに心が躍ります。
アウトロだって最高です。
ここから物語が始まると言わんばかりに高らかにそして、あっさりと曲を締めくくります。
これ以外に正解はないと思わされる出来です。
坂道を駆け下りる
この体に開かれた世界を置き去りに
鳥のように駆け下りる
坂道を、手を広げて堂々と歩くような気分。
「この体に開かれた世界」ってユニークで、やや自分の世界に酔いしれている感じがいいです。オーリーの歌を聴いてると彼のテリトリーに無理やり連れてこられる感覚があります。
「角部屋」とか「逢引」とか「あさま」とか。
小説の世界に没入するのに似てる気がするんですよね。
重心を低くとり
加速するこの命が
過ぎてく家や木々を抽象の絵に変える
初めて聴いたとき、フフッと思わず笑っちゃいました。
ライブで重心を低くして歌うオーリーを想像したからです。
実際はそこまでお茶目ではなかったですが…。(笑)
「加速する」以降はかなりシュールです。
歌っているのは多分、スピードを増していく自分から横目に見える世界が段々とボケていく様子。
新幹線からみる車窓の家々が抽象画みたいにぼけるやつ。
きっと無理やり格好よく詩に書き換えたんです。たぶん。。
季節が耳打ちする
「俺たちに何を待つの」
締め切られたあの窓に
「自由だ」と言い聞かせて
物体の擬人化はよくありますが、「季節」の擬人化ってなかなか変わってますよね。
ここら辺は特に折坂節みたいなものを感じてしまうところです。
閉ざされた部屋から世界へ。
こんな風に歌い上げるのがカッコイイ。
その角を曲がれば 細く、暗い道に出る
いつかは会えるだろう
嘘みたいなそんな場所で
未来は必ずしも明るいものではないが、なに、暗くなることはない。
この曲はそんなことを言っている気がします。
うまく言えないけど、「坂道」という曲が生まれてきてくれてとても感謝しています。
それくらい好き。
我に返ると、ちょっと引くくらいこの曲が好きなんだと実感しました。