キリンジ入門
キリンジと言えば去年のLINE MUSICのCMで、のんさんが『エイリアンズ』のカバーを披露し、世間一般にも知られるようになったと思います。
問題はそこからどれだけの人がキリンジを深堀りしていったかということです(笑)
僕がキリンジを認知したのは確か高校2年のとき。秦さんをよく聴いていた時にYouTubeで『エイリアンズ』のカバーをされていたのを発見したんです。
それからTSUTAYAで超名盤「3」を借り、キリンジを聴くようになりました。
最初はあのヤヴァいジャケットデザインに戸惑いを隠せませんでしたが、堀込兄弟の音楽はセンスの塊でした。
以下、「3」よりシングル曲を3つ。
度肝を抜かれたのを覚えています。
それまで真面目な?普通の?音楽(ミスチルとかレミオロメンとか)に慣れ親しんできたのに急にクセの強い世界観に出会ってしまって…
密かに興奮していました。
このいかにも凡人(失礼)のルックスの二人がさらっとこんな音楽をやっているのもまた好感度アップ(笑)
『君の胸に抱かれたい』なんてMVがぶっ飛んでます。歌詞もスピッツ並みに意味不明です。
本当に「3」は末恐ろしいアルバムです。いい曲が多すぎるんです。
『イカロスの末裔』『悪玉』『車と女』『メスとコスメ』『あの世で罰を受けるほど』『千年紀末に降る雪は』『むすんでひらいて』
お腹いっぱい…
犬養毅風に言うと「聴けばわかる」です。
どれもいいですがここで一つ挙げるとするなら『メスとコスメ』。かなり好きな曲。
キリンジは兄弟二人ともボーカルもしますし、曲も書きます。
この曲は兄の高樹さん作でボーカルも担当されています。
お兄さんの作る曲はなかなか危ない曲が多いんですが、この曲で歌うのは「昔付き合っていた女性が整形をして、以前とは違う姿で自分の前に現れた」という状況です。
こんな経験が実際にあったのかはわかりませんが、ドラマ一本できそうです(笑)
歌詞が面白いので所々見てみましょう。
最初は
不二子もハニーも真っ蒼
噂で変わったと聞いてはいたけど
「ひさしぶりね」と微笑む
戸惑いを見透かすように
光景が目に浮かびます。凄まじい描写力。冒頭の揶揄もパンチがあって笑ってしまいます。
肋骨を抜いたね 面の皮を剥いだろう
蛾を思わせる その眉 自慢の胸 鼻高々
見知らぬ人女性
変わったどころではない、もはや別人になっていたんですね。「蛾を思わせる」という表現、なんとなく妖艶だけど怖さを感じるようなイメージ。
すごくディープで、この歌詞を見て当時の僕はゾッとしました。
僕の胸の奥に住む君の面影を塗り替えに来たの?
いつでも君の瞼はやさしく泣いたあとのように美しかった
当てつけのつもりなのかい?それとも未練かい?
熱い紅茶も冷める距離だね
やさしく泣いたあとのように美しかった
姿を変えて再び現れた彼女の意図を探るこの二つの節。
言い回しが独特で面白い。意味不明の歌詞というわけでもなく、絶妙にこの場の雰囲気が伝わってきます。紅茶のくだりはキリンジの歌詞のなかでもよく引き合いに出される秀逸な表現です(笑)
でもきれいだぜ 君はきれいだぜ
その昔よりもすっごくきれいだぜ
きっとなればいい 君はなればいい
君のなりたい「本当」になればいい
そうさきれいだぜ とてもきれいだぜ
君は君のなりたいようになればいい 祈る僕さ
整形した女性の苦悩を吹き飛ばすような歌詞です。
でも歌詞全体を見ると「美しかった」と「きれい」は意図的に使い分けているようにおもいます。「本当」を追い求めて「きれい」にはなれても美しくはなれないと暗に言っているような気もします。
歌詞もさることながらこの歌詞と相性ばっちりのメロディー。
コード進行とかほとんどわからないので偉そうなことは言えませんが素人ながら完成度が高すぎる曲だと思います。
アルバム曲らしいと言えばアルバム曲らしいですがキリンジのなかでも傑作といえる曲ではないでしょうか。
今、こうしてブログを書くにあたり久しぶりにキリンジの曲と向き合ったわけですがやっぱりいいです、キリンジ。
残念ながら僕がキリンジを知ったときには兄弟2人のキリンジは終了を迎えていて、兄の堀込高樹さんが新しくバンドとしてキリンジを再開させていました。
兄弟時代に一度ライブに行ってみたかったです。
今のキリンジの曲も含めてまた何か書くと思います。